SUZURIのブランディング

ブランドの定義と運用フローの設計

Communication Design
Design Management

SUZURIというサービスが成長して事業部化することが決まり、チームメンバーが増えてきました。しかしそれと同時に、「これってSUZURIっぽいよね」と言われているものが個々人の間でズレていることも増えてきました。 さらに、ユーザーとのコミュニケーションのタッチポイントもチームメンバーの増加と同時に増加しているものの、チームメンバーそれぞれの「SUZURIっぽい」で解釈しているため違和感が生じてきました。 そのため、私は「SUZURIっぽい」を言語化してブランドを明らかにしていくことにしました。

SUZURIのブランディング

すでにブランドがあった

ブランドはプロダクトやサービスの体験とともに、ロゴ、色、タイポグラフィ、コピー、コンポーネントなど様々なデザインシステムを反復することで構築されます。 実はSUZURIにはすでに「忍者スリスリくん」というキャラクターや、「ズッキュン」などをはじめとしたマイクロコピーに他のサービスとは異なった特徴があり、オリジナルグッズを作るというサービスの機能的価値にとどまらない意味的価値を提供できていました。 「SUZURIっぽい」つまり「SUZURIのブランド」を言語化することは、SUZURIの現在の意味的価値を分析し、それを踏まえてこれから先の未来、SUZURIがどのような価値を提供していくか決める作業なのではないかと私は考えました。

ブランド・ビジョン・モデル

ブランドを定義するにあたり、ブランド論の第一人者デビッド・アーカーが著書『ブランド論---無形の差別化を作る20の基本原則』で定義したフレームワークである「ブランド・ビジョン・モデル」を使用しました。 この「ブランド・ビジョン」とは、ブランドにこうなってほしいと強く願うイメージを、はっきりと言葉で説明したものです。今後の価値提案を反映し、ブランド構築のための計画や構想を左右します。 ほとんどのブランドは一つの概念やフレーズでは定義できないため、6個〜12個の一つのブランドの基盤となるビジョンの構成要素であるビジョン・エレメントで定義します。

Title

ビジョン・エレメントの定義

「ブランド・ビジョン・モデル」フレームワークをもとに、SUZURIの現在の意味的価値を分析し、それを踏まえてこれから先の未来、SUZURIがどのような価値を提供していくかという観点で、私のファシリテーションのもと、SUZURIのデザイナー全員で「ビジョン・エレメント」になりうるものを付箋に書き出し、発散と収束を繰り返したのち、草案を決定しました。

チームへの浸透

定義してもそれをチームへ浸透させなければ意味がありません。 まず、ビジネス戦略との整合性がとれていなければうまくワークしないと考え、草案をもとにシニア・デザイナーとマネジメントラインでビジネス戦略とのすりあわせをし、細かなチューニングを行いました。 その後、事業部内のチームごとに現状の課題の共有とブランドの活用方法のインストラクション及びディスカッションを行いチームメンバーが「自分ごと化」できるようにしました。

草案をまとめたNotion

草案をまとめたNotionのページ

運用の設計

もともとの課題があらゆるSUZURIのコミュニケーションのタッチポイントにおいて、一貫した意味や体験を提供し続けることだったため、私は普段の業務において自然にブランドに対する取り組みを行える仕組みを設計しました。 まず、施策の立案に関するレビュー、デザインレビュー、コードレビューなど業務におけるあらゆるレビューにブランドに関する評価項目を加え、ブランドに関してディスカッションできるようにしました。 さらにリリースノートや新機能のお知らせなどのライティングのガイドライン、広告に関するガイドラインなどの各種ガイドラインを設け、自動的にブランドを適用できる仕組みを整備しました。 また、新しく参加したメンバーのオンボーディングとして毎月ブランドに関してインストラクション及びディスカッションする場を設けました。

ブランドの運用
みんなでブランドを育てる

みんなで育てる

ブランドは決定事項ではなく必要に応じて柔軟に育てる必要があるため、不変のものではなく「チームメンバーみんなで育てるもの」とはじめに定義しました。 Notion上に変更のリクエストができる窓口を設け、オープンソース的に議論しながらブランドを育てられるような設計にしました。 これはブランドを常に「自分ごと化」することに役立っています。